破壊的イノベーション創出に向けた挑戦
内閣府が掲げる「ムーンショット型研究開発制度」というものがある。これは、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を対象とした野心的な目標及び構想を国が策定し、失敗を許容しながら挑戦的な研究開発を推進するというもの。日本の独創的な基礎研究がイノベーションを生み出し、次なる基礎研究投資を呼び込む好循環を図る。
背景として考えられるのが、海外の研究動向。脳神経を模倣したニューロ・コンピュータや人工光合成技術、量子暗号技術を用いた通信衛星等の非常に革新的な研究事例が相次いでいる。IPS細胞や光の量子メカニズムを応用した高速コンピュータといったような独創的な研究成果を日本は有しているとはいえ、世界的に見れば存在感に乏しい印象。日本の直面する社会課題の解決含め、日本をイノベーションの中心地とする狙いがあるのだろう。
「ムーンショット目標」
2020年1月には、ムーンショット型研究開発制度が目指すべき「ムーンショット目標」が設定された。設定された目標は、①「2050年までに人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」、②「2050年までに超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現」、③「2050年までにAIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」、④「2050年までに地球環境再生に向けた持続可能な資源環境を実現」、⑤「2050年までに未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」、⑥「2050年までに経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」、⑦「2040年までに主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現」(2020年7月追加)となっている。
これらの目標を俯瞰して気付くのは、今まで市場で幾度となく注目されてきた投資テーマが網羅されているように見える点だろう。先端技術に関するものや、ヘルスケアに関するもの、環境に関するものといった具合だ。そうしたテーマは、日本社会の浮揚を懸けた目標にちなみ、いつの日か「ムーンショット」という投資テーマとして統合されるかもしれない。
主な関連銘柄(銘柄略称)
(マーケット支援部 山本)