世界の新型コロナウイルス感染者は3/8時点で約1億1682万人と集計されている。世界人口に占める感染率は約1.5%に留まる。世界で最も感染者の多い米国においては8.8%だが、それでも低水準に留まる。まだまだ感染余地が大きく、予断を許さぬ状況と言えよう。
足もとで差はあれどワクチン接種本格化の兆しが見えつつある中では、事前に集団感染の兆候を掴むための追跡調査も重要となろう。
そんななかで世界的に注目されている印象なのが、下水に含まれる新型コロナウイルスを調べるという下水分析調査だ。
新型コロナ感染者の糞便には発症前からウイルスが存在するとされ、下水処理場に流入する下水等のPCR検査結果から感染流行の兆しのある地域を特定できる可能性がある、とのことだ。実際に、オランダの一都市では最初の症例が正式に公表されるよりも前に、既に下水試験・下水に基づく疫学調査(WBE)で新型コロナのRNA(リボ核酸)が発見されていた模様。従来の様な発症患者や重症者のみならず軽症者や無症状者も広く焦点を当てることになる他、個人毎の検査を行わずともより正確に新型コロナウイルスの広がりを推定できるとして、より効率的に感染のリスクが高い地域を特定し適切な感染拡大策が講じられるのではと期待されているようだ。
新型コロナウイルスの下水分析調査の本格化が求められる背景としては、ワクチン普及の世界的な遅れがあろう。ワクチン接種本格化の兆しはあるものの、供給面では依然課題が多そう。日本国内や欧州等、一部国・地域を除くと感染抑止の政策対応が後手に回っている感は否めないと思われる。それでは元の木阿弥になりかねないからこそ、早期に流行リスクの高い地域を割り出して先手を打つべく下水分析調査が求められるのだ。
また、足もとでは感染力の強いウイルス「変異株」の感染急拡大が世界的な問題事項となっている。下水サンプルのシーケンス解析結果はこの変異株の伝播状況を追跡できる可能性もあり、不確実性の低減に繋がり得る。「感染無き収束」実現のための秘策となろう。
(マーケット支援部 山本)