社会や環境へのインパクトも追求
ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が脚光を浴びてから既に久しいが、最近新たに注目されているものがある。その名も「社会的インパクト投資」。これは、金銭的なリターンの追求と並行して、社会や環境へのインパクトを同時に生み出すことを意図する投資とされている。
この場合、投資判断が従来のリスク・リターンという2次元評価からリスク・リターン・インパクトの3次元評価になるとされ、新たな投資指標として注目できそうだ。
市場規模は大きく伸びて行く見通し
社会的インパクト投資に関しては、足もとで個人投資家向け商品を開発したある国内大手運用会社をけん引役として、機関投資家の裾野が広がりつつあるようだ。同投資の国際的な推進団体GSGの調査によれば、社会的インパクト投資の2018年度の国内市場規模は前年度比5倍の3440億円に達した模様。そして、世界の市場規模は2020年には3070億ドルと、2018年の2281億ドルから大幅に増加することが見込まれているようだ。
一般の個人投資家が社会的インパクト投資を実行できるクラウドファンディングや投資信託等の金融商品が拡大していることや、生保や銀行、ベンチャーキャピタル、資産運用会社といった既存のメインストリーム金融機関による社会的インパクト投資への参入の流れがさらに拡大していることが、市場規模拡大の背景として指摘されている。
また、昨年10月に設定されたある国内大手運用会社の先端医療ファンドの残高が1800億円にまで膨らんでいる他、あるメガバンクは環境や社会に配慮した事業に限定した持続可能な開発目標(SDGs)ローンを拡充している模様。
自治体も活用する
社会的インパクト投資を巡っては、民間企業のみならず、県や市といった地方自治体も積極的な印象を受ける。
例えば、神奈川県が未病・先端医療産業に投資する12億円規模のファンドを組成したり、自治体から委託された民間事業者が投資家の資金を元手に社会的課題を解決する民間委託事業「ソーシャルインパクトボンド(SIB)」の案件が昨年の2件から現時点で10件に増加している模様。広島県は「がん検診の受診率向上」を、多摩市は「糖尿病の重症化予防」を目的として導入している他、豊中市は「禁煙」、福岡市は「薬剤処方の適正化」を目的にSIB組成を準備していると伝わっている。
持続可能な発展の実現に向け、新たな資金流入のきっかけとなることに期待したい。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、EG(6050)、三菱商(8058)、みずほ(8411)、野村HD(8604)、第一生命(8750)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 山本)