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中国からの便り

 第25回:民間企業の経営戦略(5) 順豊速運(S.F. Express) 


中国の宅配便市場は、米フェデラル・エクスプレス(FedEx)やユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)などの外資系物流大手、国有の中国郵政速逓物流(中国郵政集団傘下)、順豊速運(以下、「順豊」という)や「4通1達」に代表される民営事業者の3大勢力がほぼ拮抗している。

「4通1達」。すなわち、申通快逓、圓通速逓、中通速逓、匯通快運、韻達快運の大手・中堅5社と比べて、やや異質の存在と言えるのが民営最大手の順豊だ。「4通1達」は加盟店方式を採用している点で共通しているほか、創業者がいずれも浙江省桐盧県の出身で、また業務の8割以上がEコマースのC2C・B2C貨物で、C2C最大手の淘宝網(タオバオ)に大きく依存している。

一方の順豊は直営店体制をとっており、Eコマース業者への依存度が低い反面、単価も相対的に高い。

中国宅配便市場では、06年以降のEコマースの急拡大とともに、民営事業者が低価格を武器に大幅にシェアを伸ばしてきた。特に上海を中心とした長江デルタ地域内では、民営事業者の参入により荷物1個あたり5~6元の低価格が定着している。

93年創業の順豊は民営企業でありながら価格競争とは一線を画してきた。創業者の王衛氏(41)は上海生まれの香港人で、今まで一度もメディアの取材を受けたことがないとされる「謎の人物」である。順徳(広東省)で順豊を創業した当時は、彼自身を含む数人の配達員が香港と順徳の間を往き来し、映画「トランスポーター」のような運び屋的な仕事が事業の原点であった。

宅配便は一種のネットワーク事業であり、90年代当時のネットワーク構築といえば、小さな営業スペースに電話1本と、自転車数台・配達員数名を配置すれば立派な1営業拠点になった。こうした営業所を全国に隈なく張り巡らすためには、地方の零細トラック業者を傘下におさめる加盟店方式が最も手っ取り早く、短期間で事業規模を拡大させるにはもってこいの方法であった。順豊も00年までは加盟店方式を採用していた。しかし、個々の加盟店経営に深入りできないため、サービスの品質確保は常に悩みの種であった。これに危機感を募らせた王衛氏は全加盟店に対し、順豊に店の営業全般を譲渡するか、離脱してもらうかの二者択一を迫った。これには相当な抵抗にも遭ったが、彼の強い意志もあり、2年間でほぼ解決した。

直営店体制への転換を終えたばかりの03年は全国規模でEコマースが勢いづいた時期でもあった。そして新型肺炎SARSがまん延し、外出を控え、ネットで買い物をする人が増加。この時の順豊はすでにサービスの品質で圧倒的な優位に立っており、当時のネット通販業者のサイトでは、「送料15元(順豊25元)」のような送料表記が一般的で、同社がブランド価値を樹立した証左ともいえる。

新型肺炎流行時は航空貨物運賃もかつてないほどの低価格になっていた。主要都市間の宅配に鉄道やトラック輸送を利用するのが一般的だった当時、王衛氏は貨物機をチャーターすることを決断した。幹線輸送を航空便に切り替えることで実現した大幅な配達時間の短縮は、競争優位につながるものとして、最大の差別化要因と言っても過言ではない。

王衛氏本人の「メディア嫌い」の性格からか、順豊は創業以来広告を一切出していない。そのかわり、自社で貨物航空会社(12年9月現在、貨物機8機保有)を設立したり、ドライバー用携帯情報端末を含めた基幹系システムへの大量投資を行った。ドライバーの給与も他社より段違いに高いようだ。

順豊はこれまで、もっぱら品質で差別化を図ってきたが、今年8月より、「4日到着便」の新サービスを開始。これは化粧品や粉ミルク、お酒など、航空貨物として送れないものに対応するためのもので、料金は民営他社並みの水準に設定している。

サービス開始前から業界内では既に「順豊もついにC2C貨物のシェアを本気で取りにきたのか」との観測が広がっていた。その背景は配送へのクレームが多い昨今、物流業者に対してEコマース業者がサービスの改善を要求するようになったことである。「京東商城」のように自社で一から物流ネットワークを構築しようとしている業者もあるが、順豊が本気であれば、宅配の大宗を占めるC2C貨物の市場構造が一変する可能性も否めないであろう。


(東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 首席代表 張 岫)
2012年10月30日

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